ベネッセ シニア・介護研究所で、高齢社会の課題を解決するために活動を続ける福田さん。その研究内容と、介護現場を交えた取り組みについてお話を伺いました。
その他2015年入社
ベネッセ シニア・
介護研究所福田 亮子
ベネッセ シニア・介護研究所は、2015年の11月11日(介護の日)に設立された株式会社ベネッセスタイルケア内のシンクタンクです。
私たちの研究の軸は3つ。1つ目は高齢者・介護に関する未解決のテーマに取り組むこと。2つ目は現場の実態やご利用者・ご家族・介護スタッフの声を発信すること。3つ目は介護人財の成長とキャリアにフォーカスした研究を行うことです。これらを通じ、ベネッセスタイルケアを利用されるお客様に、その成果をサービスとして還元するとともに、研究成果の発表・発信や、他社との協業による新製品開発などに活用することで、業界全体の高齢者サービスに役立てることを目指しています。
様々な研究内容の中でも、私たちが注力しているテーマの1つが「認知症ケア」。日本認知症ケア学会や国際アルツハイマー病協会などにおいて、ベネッセスタイルケアの各ホームとともに、取り組みを発信しています。2017年には、メディカル・リハビリホームまどか川口が日本認知症ケア学会「石崎賞」を受賞するなど、対外的な評価もいただき、自分たちの取り組みの価値を再発見できる場になったと感じています。
「認知症ケアメソッド」は、これまでの研究がサービスに還元できつつある成果の一つです。これまで個々のホームに閉じていた認知症ケアの成功事例を分析・言語化して、メソッドに落とし込みました。それをわかりやすくカードにして、各ホームで活用し始めています。
「メソッド」はマニュアルではありません。普段やっている「あたりまえ」になっていることを見直し、「その方らしさに、深く寄りそう。」という理念に具体的に繋がる行動を促す、ヒント集です。ご入居者様の安心・安全な生活の実現に必要なのは、リスクを取り除くことではなく「リスクと向き合う」こと、スタッフが何もかもして差し上げるのではなくご入居者様ができることを自らしていただけるよう「自発支援」をすること、このようなことは複数のご入居者様と複数のスタッフのいる「多対多」の環境だからこそできること、など、「その方らしさに、深く寄りそう。」ためのヒントが詰まっています。
何らかのメソッドにピンとくれば、介護スタッフから自発的に、ポジティブな発想が生まれ、ケアが変わる。そして成果が出ると自信につながり、次のアプローチを試してみる。そのサービスの好循環を目指します。すでに、優れた取り組みを実践しているホームでも、「自分たちのやり方で良かったのだ」と気付きを得ることができています。
また、他業界との協業では、人財業界と協力して介護職の定着のメカニズムを明らかにするための調査をしたり、食品メーカーと協力してご入居者様のQOLの向上に資するであろう研究をしています。
これらの取り組みや調査などはスタッフの協力なしには進みませんが、よりよいサービスを創りたいという想いは一緒。実際にスタッフから成果が出たという声を聞くと、役に立っていると実感でき、日々のやりがいにつながっています。
私は、ドイツのミュンヘン工科大学で人間工学を研究していました。「人間工学」とは、「人にとって心地良い環境をどう作るか」を追求する学問です。そして、ここでいう「環境」とは、人を取り囲むものすべてです。例えば、部屋、椅子、机、人。それらを人間の機能にあったものにするための研究です。
「将来、自分が年をとったときに、今より高齢者にとって心地よい『環境』になっていて欲しい。」そんな想いが、高齢者や介護の研究に興味をもったきっかけでした。また、高齢者の人間工学の研究が、まだまだ未開拓の分野であったことも興味を持った理由です。人間工学の世界では、若い人に比べ、子どもや高齢者のデータは多くはありません。
ベネッセに入社し、研究者として自分が知りたいことを仕事にできていることは大きなやりがいに感じています。これからも、もっといろいろなデータを集めて、研究を深めていきたい。そしてその成果を世の中に広げ、実際のサービスに活かされることを、これからも目指していきたいと思っています。