母親を超えるために看護師を目指したと伺いましたが?
「親を超えることが親孝行」が口癖だった母は保健室の先生でした。定年前に退職し、整体院を開業するなど、人と関わっていないとダメな人で、周りからの信頼は絶大でとにかくカッコよかった。母のように、一生人のために働ける仕事として看護の仕事を選びました。
整形外科とER病棟に10年間勤務。私も動き回っていないとダメな人間なので、毎日忙しかったけど大変だと思ったことは一度もありませんでしたね。
それがなぜ介護施設で働くように?
退院したおじいちゃんの面倒をおばあちゃんが看られるのだろうか。病院で勤務しているときには、いつも心のどこかに、退院後の生活に踏み込んでいけないもどかしさがありました。そんなとき、河川敷で発見された高齢の女性が緊急搬送されてきて、身元がわかるものを探していて1枚のメモを見つけました。「自然に逝かせてほしい」。尊厳死でした。それがきっかけとなって、病院と患者様の想いは一致しているのか、助けることが本当に看護師の仕事なのか、もし自分の家族が治療を望まなかったらどうすべきなのかなどいろいろ考えて、“治す”以外で生活に寄り添った働き方をしたいと、終の棲家となる老人ホームを選びました。
実際にベネッセで働いてみた印象を教えてください。
あるターミナル期のご入居者様は、入居時には既に嚥下機能が低下し、経口摂取をやめていらっしゃったのですが、往診の先生に相談すると、「食べられるんじゃないの」の一言。食べたいものをお聞きすると答えはなんとコーラ。田部特製の“とろみコーラ”の誕生です。早速お風呂上りに召し上がっていただいたら、「天国だ!!」と両手でガッツポーズ。その後もいろいろとお召し上がりになり、コーヒーゼリーを片手に満面の笑みのお写真がご家族との最後の1枚になりました。ここは、その方の人生の最後の楽しみを見つけてさしあげることを頑張っているホームなのです。